All-on-4治療 重度の骨吸収を Quad Zygomaで治療した一例

今回は当協会理事 大多和徳人先生が2024年に行った、上下顎All-on-4手術症例の発表です。下記、ご参照ください。
左:初診時
右:最終補綴セット時
 
患者情報
氏名:K.K. 様
70歳(2026年現在72歳)、女性

主訴:入れ歯が合わない、上の歯を綺麗にした。
現病歴:20代の頃、受け口を治療するために骨切りを行っている。その手術以降、歯牙の状態が悪化し初診時は総義歯を使用している。審美面について一番気にされている。5年前には子宮癌の手術をされたとのこと。インプラント治療相談のため、2024年4月17日にAll-on-4 zygomaクリニックを受診。上下顎All-on-4を希望され同年5月22日に手術となった。

既往歴:子宮癌

常用薬:特記事項なし

生活歴:飲酒 機会飲酒
    喫煙 今まで一度もないとのこと

術前顔貌所見

顔貌は左右対称。鼻翼の位置は…続きを読む

術前パノラマ画像所見

上顎および下顎、それぞれ臼歯部を…続きを読む

術後パノラマ画像所見

上顎に4本ザイゴマインプラントと…続きを読む

結果

All-on-4 治療を行う事で、主訴の改善…続きを読む

術前顔貌所見
(義歯着用)

顔貌は左右対称。鼻翼の位置は両側ほぼ対称。

上顎は全部総義歯を使用している。下顎は天然歯が残存しているが、右側の臼歯部が欠損していることが分かる。

Willisの法則を使用して咬合口径を確認すると、咬合高径の低下を認める。


術前側貌写真、セファロ写真

上顎は全て欠損、下顎は小臼歯および前歯の残存を認める。セファロ分析より、ドリコフェイシャルかつ骨格はクラスⅢであることが分かった。


術前パノラマ画像所見

上顎および下顎、それぞれ臼歯部をほとんど欠損していることが認められる。上顎皮質骨はかなり菲薄化しており、残存歯周囲の歯槽骨は比較的残っている。下顎臼歯相当部の顎堤の吸収を認める。


術前口腔内所見

上下顎は部分床義歯を作製しているが使用しているがほとんど使用していないとのことである。歯肉の発赤、腫脹、出血を認め、一部歯肉が退縮している。また、上顎前歯はフレアーアウトしている。顎堤は上下ともに吸収していることを認める。


術前CT画像所見

上顎は顎堤が顕著に吸収していることが明らかである。頬骨の厚みもあまりない。上顎洞粘膜に肥厚などは認めない。


治療計画

Bedrossianの分類より、ZoneⅠ〜Ⅲいずれにも十分な骨を認めないことから、Insufficient Boneと判断ができ、上顎にノーマルインプラントは困難であることが考えられる。上顎はAll-on-4のためにはザイゴマインプラントが4本必要である。しかし、頬骨の厚みがあまりないため、埋入位置は限られてくる。下顎は歯槽骨量が十分にあることから、ノーマルインプラント4本を埋入することが可能であると考えられる。また、上顎のザイゴマインプラントの埋入に関しては、 ZAGA分類のType2とType3が混在しており、頬骨がかなり薄いことから、ザイゴマインプラントが困難であることが予想される。


術後口腔内所見

術直後の写真。上顎のプロビジョナルレストレーションの口蓋側に4つのアクセスホールを認め、All-on-4である事が確認出来る。上顎と下顎の正中は一致し、フルバランスドオクルージョンになるように咬合調整が行われている。


術後パノラマ画像所見

上顎に4本のザイゴマインプラントと下顎は4本のノーマルインプラントを認める。同部にはテンポラリーシリンダーが装着されている。下顎は術前と比較すると、前歯部付近の骨整形を示唆する所見を認める。

術後顔貌所見

患者都合により、写真は術後数日経過してから撮影している。顔貌は左右対称。人中よりやや右側の位置に上顎正中を認め、上顎前歯部正中が顔貌正中と一致していない。プロビジョナルレストレーションでは前歯の正中が一致している。

最終補綴物作製前の試適

プロビジョナルレストレーションでは咬合に問題はなかったが、前歯部の正中が顔貌の正中と一致していなかったため、最終補綴作成前にCADで設計して作成したプロトタイプをセットし、咬合を合わせつつ、正中が一致する位置を模索した。プロトタイプは複数作製した。写真は複数回試適したうちの一つである。スマイル時の前歯の位置やスマイルラインが適切か、正中が一致しているか、上顎前歯の形態など、一つ一つチェックを行い、最終補綴に移行するにあたって気になることがないようにした。その他に患者さんが気になる点についても細く聞き取りを行い、CAD上で修正を行った。


最終補綴物作製

プロトタイプの試適から得られた情報を元に微修正を行った。また、歯牙の形態一つ一つにも患者様より要望があったため、歯牙をより細かく形態付与できるようにするだけではなく、咬合の微調整を行えるよう合計24本分の単冠を作製し、支台歯状にミリングした部位に一本ずつ合着した。

最終補綴物
セット後の所見

顔貌はほぼ左右対称、リップサポートを認め、上唇は自然な豊隆を認める。スマイルラインは下唇上部に沿うような湾曲を描いている。上顎正中は顔貌の正中に一致している。

パノラマではインプラント周囲に異常所見は見られず、クラウンがモノリシックジルコニアに合着されていることも分かる。


最終補綴物セット後の
口腔内所見

最終補綴物セット後の写真。上下顎のモノリシックジルコニアの上部構造である事が確認出来る。またアクセスホールを計8つ認め、All-on-4である事が確認出来る。上顎と下顎の正中と一致している。


結果

上下顎All-on-4治療 を行う事で、咬合機能及び審美の回復を行うことができた。咬合回復を行ったことで、食べ物も種類問わず食べられるようになったとのことで、患者様からも喜びの声をいただいた。

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