全顎歯の動揺と歯痛を認めてご飯が食べれない。全顎の咬合改善目的に上下顎All-on-4を決めた症例。

今回は当協会理事 大多和徳人先生が2024年に行った、上下顎All-on-4ザイゴマインプラント手術症例の発表です。下記、ご参照ください。
左:初診時
右:最終補綴セット時
 
患者情報
氏名:Y.O 様
49歳(現在50歳)、女性
福岡県在住の患者様

主訴:全ての歯のぐらつきと右奥歯の痛み

現病歴:歯の動揺は以前より自覚していたが、何とか食事が出来ていたので放置。2024年4月頃から右上の痛みも出始め、ご飯を咬んで食べる事が出来なくなった。ご飯を咬んで食べたいと思い、インターネットでALL-on-4ザイゴマインプラント手術を知り、5月に当院初診。5┘は疼痛の訴えが強く、ご本人より抜歯の希望があった為、同月、抜歯。他部位は抜歯後に同日ALL-ON-4予定となる。

既往歴:特記事項なし

常用薬:なし(サプリメントは数種類)

生活歴:飲酒 なし
    喫煙 電子タバコ10-15本/日
   (紙煙草と合わせて 30年)

術前顔貌所見

顔貌は左右対称、鼻唇溝は…続きを読む

術前パノラマ画像所見

上下とも全顎的に水平性骨吸収を…続きを読む

術後パノラマ画像所見

上顎に4本のザイゴマインプラントと…続きを読む

結果

All-on-4 治療を行う事で、主訴の改善…続きを読む

術前顔貌所見

顔貌は左右対称、。鼻唇溝は両側とも深い。鼻翼の位置も両側ほぼ対称。
上唇が薄く、下唇はやや厚い。
笑顔時に上唇から見える上顎前歯部は歯冠部の2/3部が露出
バッカルコリドーは軽度。


術前口腔内所見

下顎は叢生を認める。上顎正中に対して下顎正中は左側に0.5mm程偏位。また右側の一部で交叉咬合様の所見、左側の一部で切端咬合様所見を呈する。上顎の口蓋は口蓋隆起を認める。


術前パノラマ画像所見

上下とも全顎的に水平性骨吸収を認める(中等度~高度)残存歯は上顎が65432┴3567、下顎が654321┬123456、両側上顎で異常な顎堤の異常吸収を認める。5┘、6┬6は著明な垂直性骨吸収を認める。


術前CT画像所見

上顎前歯相当部の歯槽骨は菲薄したような所見を認める。頬骨は両側とも十分な幅と厚みを認める。下顎は全顎的に唇頬側の骨吸収が著しい。 左側上顎洞は軽度粘膜肥厚を認める。


治療計画

両側上顎は前臼歯歯槽骨に十分なボリュームがないが、頬側に十分なスペースの確保が見込めた。下顎は菲薄な部位はあるものの5┬5を骨整形する事で十分な骨幅の確保が見込めると判断し、この部位に4本ノーマルインプラント埋入予定とした。前歯~小臼歯部で歯槽堤の高低差が大きいことから、安定度を高めるプラットフォームの設計が必要であると考えた。また、頬骨に十分な厚みがある事からザイゴマインプラント4本を用いる上下顎All-on-4治療 を計画した。手術を円滑なものとする為、術中は静脈内鎮静法下での手術を予定した。


手術所見

2024年7月某日 静脈内鎮静法下に手術施行

術式:静脈内鎮静法下、上下顎All-on-4
(多数歯抜歯術、ザイゴマインプラント埋入術)施行

手術時間:2時間45分


術後口腔内所見

術直後の写真。上顎のプロビジョナルレストレーショの52┴25相当部の口蓋側に4つのアクセスホールを認め、All-on-4である事が確認出来る。上顎と下顎は正中と一致し不正咬合の改善を認める。


術後パノラマ画像所見

上顎に4本のザイゴマインプラントと4本のノーマルインプラントに8本のアバットメントを認める。同部にはテンポラリーシリンダーが装着されている。上下とも骨整形を示唆する所見を認める。

術後顔貌所見

顔貌は左右対称、口角は両側とも殆ど同じ位置にある。人中に対して上顎正中はやや右側に位置している。鼻唇溝は減少している。

試適

2024年10月

CAD/CAMで製作したプロトタイプを患者の口腔内にて試適、歯は少し丸みのある形状を採用した。色について最終補綴物では歯の色はA2、歯肉の色は自然なピンク色との事だった。

口腔外所見:口角の位置は左右差は殆ど等位となっている、鼻唇溝は少し深みがある。

口腔内所見:人中の正中と上顎正中が一致、それにあわせて下顎の正中も一致。また不正咬合の改善を認める。

最終補綴物セット

2024年11月

試適したプロトタイプをもとに、ジルコニアミリングマシンを使用して、モノリシックジルコニアの上部構造を作成しステイニングにて歯肉および歯牙の色を調整。術後5か月に患者様の口腔内にセット。色はA2で歯肉の色は自然なピンク色とした

最終補綴物セット後の顔貌所見

顔貌はほぼ左右対称、リップサポートを認め、上唇は自然な豊隆を認める。スマイルラインは下唇上部に沿うような湾曲を描いている。

上顎正中は顔貌の正中に一致している。バッカルコリドーは一部認める。


最終補綴物セット後の口腔内所見

最終補綴物セット後の写真。上下顎のモノリシックジルコニアの上部構造である事が確認出来る、またアクセスホールを計8つ認め、All-on-4である事が確認出来る。上顎と下顎は正中と一致し不正咬合の改善を認める。右側面像が開口したような所見となっているが、正面観の咬合が正しい位置かと思われる。


結果

上下顎All-on-4治療 を行う事で、正常な咬合関係を獲得した。また、お悩みのあった動揺や疼痛からも解放された。ご本人様より、「咬めるだけでなく、理想の笑顔が出来るようになりました。」との事だった。

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