All-on-4治療 最終補綴で工夫を行った一例

今回は当協会理事 大多和徳人先生が2024年に行った、上下顎All-on-4手術症例の発表です。下記、ご参照ください。
左:初診時
右:最終補綴セット時
 
患者情報
氏名:M.I. 様
57歳(2026年現在59歳)、女性
福岡県内から受診

主訴:入れ歯が合わない、噛みづらくなってきた。
現病歴:リウマチ治療のため、月に一回点滴と甲状腺疾患のため処方薬を服用中。上顎は部分床義歯、下顎は義歯の作製をされていない。上顎の部分床義歯が不適のため、疼痛があり他の残存歯も疼痛が出ており、食事などが困難になってきているとのこと。インプラント治療相談のため、2024年9月18日にAll-on-4 zygomaクリニックを受診。上下顎All-on-4を希望され同年11月2日に手術となった。

既往歴:リウマチ、甲状腺疾患

常用薬:チラージン、クリストール、リウマチの点滴(月1回)

生活歴:飲酒 なし
    喫煙 15本/日を20代から
       (一年前に電子タバコへ変更)

術前顔貌所見

顔貌は左右対称。鼻翼の位置は…続きを読む

術前パノラマ画像所見

上顎および下顎、それぞれ臼歯部を…続きを読む

術後パノラマ画像所見

上顎に4本ザイゴマインプラントと…続きを読む

結果

All-on-4 治療を行う事で、主訴の改善…続きを読む

術前顔貌所見

顔貌は左右対称。鼻翼の位置は両側ほぼ対称。

上顎前歯部の歯頚部は隠れている。上顎前歯切縁と下唇のラインは不一致。上顎前歯の正中は一致しているが、1┸1の切縁は一致していない。上顎左側前歯部に一部空隙が確認される。

上顎は部分床義歯を使用している。Willisの法則を使用して咬合口径を確認すると、咬合高径の低下を認める。


術前側貌写真、セファロ写真

上下顎ともに臼歯部の欠損を認める。下顎と上顎の咬合口径の低下は見られるが、デンチャースペースは十分あることが分かる。セファロ分析よりハイアングル傾向であることがわかった。歯性に関する問題点として、オーバージェットが平均より大きいことが分かった。


術前パノラマ画像所見

上顎および下顎、それぞれ臼歯部をほとんど欠損していることが認められる。上顎皮質骨はかなり菲薄化しており、残存歯周囲の歯槽骨も重度の骨吸収を認める。下顎は左右第一小臼歯が残存しているが、根尖部周囲に透過像の亢進を認める。下顎臼歯相当部の顎堤の吸収を認める。


術前口腔内所見

上下顎は部分床義歯を作製しているが使用しているがほとんど使用していないとのことである。歯肉の発赤、腫脹、出血を認め、一部歯肉が退縮している。また、上顎前歯はフレアーアウトしている。顎堤は上下ともに吸収していることを認める。


術前CT画像所見

上顎は臼歯部の顎堤が顕著に吸収していることが明らかである。頬骨は厚みは十分にあることが明らかである。上顎洞粘膜に肥厚などは認めない。


治療計画

Bedrossianの分類より、ZoneⅠ〜Ⅲいずれにも十分な骨を認めないことから、Insufficient Boneと判断ができ、上顎にノーマルインプラントは困難であることが考えられる。上顎はAll-on-4のためにはザイゴマインプラントが4本必要である。下顎は臼歯部の歯槽骨が吸収されているが、前歯部は歯槽骨量が十分にあることから、ノーマルインプラント4本を埋入することが可能であると考えられる。また、上顎のザイゴマインプラントの埋入に関しては、 ZAGA分類のType3とType4が混在しているため、ザイゴマインプラントが困難であることが予想される。


術後口腔内所見

術直後の写真。上顎のプロビジョナルレストレーショの51┴15相当部の口蓋側に4つのアクセスホールを認め、All-on-4である事が確認出来る。上顎と下顎の正中は一致し、フルバランスドオクルージョンになるように咬合調整を行っている。


術後パノラマ画像所見

上顎に4本のザイゴマインプラントと下顎は4本のノーマルインプラントを認める。同部にはテンポラリーシリンダーが装着されている。下顎は術前と比較すると、前歯部付近の骨整形を示唆する所見を認める。

術後顔貌所見

顔貌は左右非対称。人中直下の位置に上顎正中を認め、上顎前歯部正中が顔貌正中と概ね一致している。術直後ではあるが、プロビジョナルレストレーションを装着したことによってWillisの法則で確認すると、咬合口径が回復していることがわかった。

最終補綴物作製前の試適

最終補綴の審美面に関して強く不安を持たれていたため、患者様の希望により最終補綴作成前にCADで設計して作成したプロトタイプをセットし、患者様に確認していただいた。スマイル時の前歯の位置やスマイルラインが適切か、正中が一致しているか、上顎前歯の形態など、一つ一つチェックを行い、最終補綴に移行するにあたって気になることがないようにした。その他に患者さんが気になる点についても細く聞き取りを行い、CAD上で修正を行った。


最終補綴物作製

プロトタイプの試適から得られた情報を元に微修正を行った。また、歯牙の形態一つ一つにも患者様より要望があったため、歯牙をより細かく形態付与できるように、合計24本分の単冠を作製し、支台歯状にミリングした部位に一本ずつ合着した。

最終補綴物
セット後の所見

顔貌はほぼ左右対称、リップサポートを認め、上唇は自然な豊隆を認める。スマイルラインは下唇上部に沿うような湾曲を描いている。上顎正中は顔貌の正中に一致している。

パノラマではインプラント周囲に異常所見は見られず、クラウンがモノリシックジルコニアに合着されていることも分かる。


最終補綴物セット後の
口腔内所見

最終補綴物セット後の写真。上下顎のモノリシックジルコニアの上部構造である事が確認出来る。またアクセスホールを計8つ認め、All-on-4である事が確認出来る。アクセスホールがプロトタイプと同じ位置にあることから、ミリングの精度の高さが分かる。上顎と下顎の正中と一致している。


結果

上下顎All-on-4治療 を行う事で、機能及び審美の回復を行うことができた。咬合回復を行ったことで、食べ物も種類問わず食べられるようになったとのことで、患者様からも喜びの声をいただいた。

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