乳癌既往のある患者に上下顎All-on-4を行った一例

今回は当協会理事 大多和徳人先生が2024年に行った、上下顎All-on-4手術症例の発表です。下記、ご参照ください。
左:初診時
右:最終補綴セット時
 
患者情報
氏名:W.K. 様
59歳(現在61歳)、女性
福岡県外から受診

主訴:上下の入れ歯が噛みにくい、インプラントをしたい

現病歴:乳癌のため、乳癌摘出およびリンパ節郭清済み。現在は抗癌剤を服用している。上顎は総義歯、下顎は部分床義歯を使用しているが、下顎の鉤歯が動揺しているため疼痛があり、下顎の義歯は使用できていない。インプラント治療を希望され、2024年6月10日にAll-on-4 zygomaクリニックを受診。上下顎All-on-4を希望され同年6月17日に手術となった。

既往歴:乳癌、腸炎、高血圧

常用薬:エルデカルシトールカプセル、アロマシン、ウルソデオキシコール、アフィニトール、

生活歴:飲酒 禁酒して30年
    喫煙 現在禁煙中
    (電子タバコ10本/日を37年)

術前顔貌所見

顔貌は左右非対称、右口角の位置が…続きを読む

術前パノラマ画像所見

上顎は全て欠損、下顎は残存歯がほぼなく…続きを読む

術後パノラマ画像所見

上顎に4本ザイゴマインプラントと…続きを読む

結果

All-on-4 治療を行う事で、主訴の改善…続きを読む

術前顔貌所見

顔貌は左右非対称。鼻唇溝は深く、左右で非対称。鼻翼の位置は両側ほぼ対称。
上顎は総義歯を使用している。左側の臼歯部がフルスマイル時に見えるものの、右側が見えないことから水平的咬合平面がカンペル平面とは平行ではないことも明らかである。左右臼歯部が欠損していることも明らかであることから、咬合口径が著しく低下していることが予想される。


術前口腔内所見

上顎は総義歯を使用しているが、ほとんど使用していないとのことであり、咬合平面が傾斜しているのが明らかである。また、下顎と上顎の左右臼歯部には十分なデンチャースペースがなく、下顎前歯部のブリッジが脱離している。


術前パノラマ画像所見

上顎は歯牙が全て欠損しており、下顎は前歯部のみ残存しているのを認める。上顎歯槽骨は前歯部相当部から臼歯部相当部にかけて顕著な歯槽骨の吸収を認める。下顎の歯槽骨は十分な厚みの歯槽骨を認める。


術前CT画像所見

上顎は歯槽骨が顕著に吸収していることが明らかである。頬骨は厚みが薄いことが明らかである。下顎、上顎共に骨幅が薄いことが確認できる。上顎洞粘膜に肥厚などは認めない。


治療計画

Bedrossianの分類より、ZoneⅠ〜Ⅲいずれにも十分な骨を認めないことから、Insufficient Boneと判断ができ、ノーマルインプラントは困難であることが考えられる。上顎はAll-on-4のためにはザイゴマインプラントが4本必要であることが考えられる。下顎は十分な歯槽骨量があることから、ノーマルインプラント4本を埋入することが可能であると考えられる。また、上顎のザイゴマインプラントの埋入に関しては、 ZAGA分類のType3とType4が混在しているため、ザイゴマインプラントが困難であることが予想される。


術後口腔内所見

術直後の写真。上顎のプロビジョナルレストレーショの52┴25相当部の口蓋側に4つのアクセスホールを認め、All-on-4である事が確認出来る。上顎と下顎は正中と一致し叢生や交差咬合の改善を認める。


術後パノラマ画像所見

上顎に4本のザイゴマインプラントと下顎は4本のノーマルインプラントを認める。同部にはテンポラリーシリンダーが装着されている。下顎は術前と比較すると、前歯部付近の骨整形を示唆する所見を認める。

術後顔貌所見

写真に角度がややついているが、顔貌は左右非対称、右口角が左口角よりやや高位の位置にある。人中直下の位置に上顎正中を認め、上顎前歯部正中が顔貌正中と概ね一致している。術直後ではあるが、プロビジョナルレストレーションによって術前と比較すると審美面が大幅に改善されていることが明らかである。

最終補綴物セット

2025年4月

術後のプロビジョナルレストレーション及び最終補綴作成前にCADで設計して作成したプロトタイプをもとに、モノリシックジルコニアを用いて作製した上部構造をステイニングで歯肉および歯牙の色を調整した。術後10か月に患者様の口腔内にセット。色や歯の形態は患者様のご要望通りに作成した。


最終補綴物セット後のCT画像所見

両側頬骨にそれぞれ1本ずつインプラントが埋入されている、また上顎前歯部と下顎骨に6本のインプラントを認める。インプラント周囲に明らかな異常所見は認めない。両側上顎洞は軽度粘膜肥厚を認めるが、術前と比較して進行を示唆する所見は認めない。また、左右とも十分な含気性を認める。上顎はインプラントの直下、下顎はインプラントの直上に上部構造物様の不透過像を認める。

最終補綴物セット後の顔貌所見

顔貌はほぼ左右対称、リップサポートを認め、上唇は自然な豊隆を認める。スマイルラインは下唇上部に沿うような湾曲を描いている。

上顎正中は顔貌の正中に一致している。


最終補綴物セット後の口腔内所見

最終補綴物セット後の写真。上下顎のモノリシックジルコニアの上部構造である事が確認出来る、またアクセスホールを計8つ認め、All-on-4である事が確認出来る。上顎と下顎は正中と一致し叢生や交差咬合の改善を認める。


結果

上下顎All-on-4治療 を行う事で、機能及び審美の回復を行うことができた。患者様からも喜びの声をいただいた。

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