Ⅰ型糖尿病から歯周病を併発し全ての歯を喪失、All-on-4を決断した患者

今回は当協会理事 大多和徳人先生が2024年に行った、上下顎All-on-4手術症例の発表です。下記、ご参照ください。
左:初診時
右:最終補綴セット時
 
患者情報
氏名:H.E 様
46歳(現在47歳)、男性
福岡県在住の患者様

主訴:All-on-4ザイゴマがしたい

現病歴:30歳の頃にⅠ型糖尿病と診断された。その後かかりつけ歯科で歯周病と診断されるも放置。41~42歳の時に2~3本抜けて、45歳までにすべての歯を喪失。義歯の作成は行わずに過ごしていたが、インターネットで当院のオールオン4ザイゴマをしり、相談目的に2024年4月初診。

既往歴:Ⅰ型糖尿病(当院検査時HbA1C9.7%、空腹時結党時204mg/dl)、甲状腺機能低下(バセドウ病・甲状腺腫瘍術後)、ドライアイ、術後副甲状腺機能低下

常用薬:アスパルトBS注ソロスター(ノボラピッド)、
    トレシーバ注フレックスタッチ、
    チラージンS錠、
    ロカルトロールカプセル、
    チラージンS錠

生活歴:飲酒 焼酎1合/毎日
    喫煙 電子タバコ20本/日
    (紙煙草と合わせて 26年)

術前顔貌所見

顔貌は左右非対称、左口角の位置が…続きを読む

術前パノラマ画像所見

上下顎とも無歯顎。上顎は顎堤異常…続きを読む

術後パノラマ画像所見

2本のザイゴマインプラントと…続きを読む

結果

上下顎All-on-4治療 を行う事で…続きを読む

術前顔貌所見

顔貌は左右非対称、左口角の位置が右口角の位置より高位にある。鼻唇溝は深く、両側とも深い。鼻翼の位置は両側ほぼ対称。
上唇が薄く、下唇が厚い。
舌は前方に突出している。


術前口腔内所見

上下顎とも無歯顎。舌は肥大したような所見を呈する。顎堤は上下とも吸収が進んだような所見を呈している。上顎顎堤に対して下顎顎堤がやや前方に位置したような所見を呈する。


術前パノラマ画像所見

上下顎とも無歯顎。上顎は顎堤異常吸収を認める、吸収は臼歯相当部で著明。両側上顎前歯相当部はやや骨幅はあり。
下顎は両側ともしっかりとした骨幅を認め、顎堤丁~下顎管まで両側とも距離を認める。右の顎堤は著明な凹凸部あり。


術前CT画像所見

上顎前歯相当部の歯槽骨は十分な骨幅を認める。上顎臼歯部は両側とも著明な吸収像を認める。両側上顎洞下壁に軽度粘膜肥厚を認める。 頬骨の骨幅は十分な幅を認める。 下顎骨は十分は骨幅を認め、骨硬化を認める。


全身的な問題点と対策

HbA1C9.7%という事で、周術期管理に難渋する事が予想された。また、最悪手術が延期または中止される事も考えたが、まずはかかりつけ医に対診する事とした。
その結果、かかりつけ医からは常時インスリン枯渇状態である為、血糖値の変動は激しいが全身状態は落ち着いており、肉体労働の制限は特にないとの事だった。手術が1時間半から2時間という事であれば、スライディングスケールの必要性もなく、前日のインスリントレシーバ注射を朝5単位まで減量し、当日朝のインスリン注射なし。術後の抗菌薬をしっかり行えば、手術を特に気を付ける事はないとの事だった。念のため、術前、術中、術後は血糖測定を行う事とした。


治療計画

両側上顎臼歯歯槽骨に十分なボリュームがなく両側臼歯部のザイゴマインプラント埋入を検討した。両側上顎前歯部は十分な骨幅を認めた事からノーマルインプラント埋入を検討した。下顎も全体的に十分な骨幅があり、歯槽頂部から下顎管までが十分な骨幅を認める為、十分な骨整形を行う予定とした。
臼歯部で歯槽堤の高低差が大きいことから、安定度を高めるプラットフォームの設計が必要であると考えた。また、頬骨に十分な厚みがある事からザイゴマインプラント2本を用いる上下顎All-on-4治療 を計画した。手術を円滑なものとする為、術中は静脈内鎮静法下での手術を予定した。


手術所見

2024年6月某日 静脈内鎮静法下に手術施行

術式:静脈内鎮静法下、上下顎All-on-4
(ザイゴマインプラント埋入術 【2本】、ノーマルインプラント埋入術 【6本】)施行

手術時間:1時間50分(上下合わせて)

※術中を通して、血糖値の異常は認めず、インプラント8本のトルクも問題なかった。


術後口腔内所見

術直後の写真。上顎のプロビジョナルレストレーショの52┴25相当部の口蓋側に4つのアクセスホールを認め、All-on-4である事が確認出来る。


術後パノラマ画像所見

2本のザイゴマインプラントと6本のノーマルインプラントに8本のアバットメントを認める。同部にはテンポラリーシリンダーが装着されている。上下とも骨整形を示唆する所見を認める。下顎は両側の高低差が少なくなっている。

術後顔貌所見

顔貌は左右非対称、左口角が右口角よりやや高位の位置にあるが術前と著変なし。人中直下の位置に上顎正中を認める。リップサポートは認める。

試適

2024年9月

CAD/CAMで製作した、プロトタイプを患者の口腔内に試適。歯の形態はやや四角い形態とした。

口腔外所見:口角の位置は左右差は殆ど等位となっている。

口腔内所見:上顎と下顎で正中は一致。上下の被蓋関係は前歯部臼歯部ともⅠ級の被蓋関係を呈する。

最終補綴物セット

2024年11月

試適したプロトタイプをもとに、ジルコニアミリングマシンを使用して、モノリシックジルコニアの上部構造を作成しステイニングにて歯肉および歯牙の色を調整。術後5か月に患者様の口腔内にセット。色や歯の形態は患者様のご要望通りに作成した。

 

最終補綴物セット後の顔貌所見

顔貌はほぼ左右対称、リップサポートを認め、上唇は自然な豊隆を認める。スマイルラインは下唇上部に沿うような湾曲を描いている。

上顎正中は顔貌の正中に一致している。


最終補綴物セット後の口腔内所見

最終補綴物セット後の写真。上下顎のモノリシックジルコニアの上部構造である事が確認出来る、またアクセスホールを計8つ認め、All-on-4ザイゴマである事が確認出来る。上顎は仮封材様の所見を認める。上顎と下顎は正中と一致している。


最終補綴物セット後のパノラマ画像所見

2本のザイゴマインプラントと6本のノーマルインプラントに8本のアバットメントを認める。同部にはテンポラリーシリンダーが装着されている。上下とも骨整形を示唆する所見を認める。下顎で著明。補綴物様不透過像を認める。


最終補綴物セット後のCT画像所見

上下8本のインプラントと上部構造物を認める、ザイゴマインプラント2本、ノーマルインプラント6本認める。それぞれのインプラント周囲に明らかな炎症所見を示唆する所見は認めない。上顎洞炎を示唆する所見は認めない。


結果

上下顎All-on-4ザイゴマ治療 を行う事で、無歯顎の糖尿病患者の咬合機能回復が可能であった。
また、Ⅰ型糖尿病という事で周術期管理、術後経過に注意が必要であったが、感染やロスト等の問題もなく経過良好のまま初回のオーラルケアをむかえる事となった。

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