差し歯がグラグラ、関節リウマチがあって他院でインプラント治療が困難だった症例

今回は当協会理事 大多和徳人先生が2024年1月に行った、上下顎All-on-4手術症例の発表です。下記、ご参照ください。
左:初診時
右:最終補綴セット時
 
患者情報
氏名:A.T 様
64歳、女性
福岡県在住の患者様

主訴:差し歯がグラグラする

現病歴:2023年12月ALLON4相談にて来院。Brが動揺して、インプラント治療を希望されるも、かかりつけ医では対応が難しいとの事で、ネットで検索していたところ当院のオールオン4治療を見つけ、当院へ来院。関節リウマチがある為、かかりつけ医と相談し、ロストのリスクがある事をご説明の上、2024年1月に手術予定となる。

既往歴:関節リウマチ、卵巣腫瘍摘出術後

常用薬:プレドニン錠、エソメプラゾールカプセル、メトトレキサート錠、フォリアミン

生活歴:飲酒 なし
    喫煙 なし

術前顔貌所見

顔貌は左右非対称、右口角の…続きを読む

術前パノラマ画像所見

75┴3467、765┬67欠損…続きを読む

術後パノラマ画像所見

2本のザイゴマインプラントと…続きを読む

結果

All-on-4 治療を行う事で、主訴の改善…続きを読む

術前顔貌所見

顔貌は左右非対称、右口角の位置が左口角の位置より高位にある。鼻唇溝は深く、右側で著明。鼻翼の位置は両側ほぼ対称。
上唇はリップサポートの確認が出来る。下唇も特に問題なし。
笑顔時に上唇から見える上顎前歯部は歯冠部の2/3部以上が露出する。
バッカルコリドーは写真では認めるようだが不明瞭。


術前口腔内所見

上顎正中に対して下顎正中は左側に1mm程偏位、21┴12345Brははマージン不適な部位を多数認める。6┴5は歯根露出を認める。下顎は叢生。┌45は連結冠


術前パノラマ画像所見

75┴3467、765┬67欠損、⑥5④┘Br、②①┴①②34⑤Br、┌45連結冠、┌5周囲歯槽骨は著明な骨吸収を認め、骨吸収像周囲に骨硬化を認める。


術前CT画像所見

上顎前歯相当部の歯槽骨は十分な骨幅を認める。上顎臼歯部は頬口蓋側的には十分な骨幅を認めるが上下的に十分な骨幅を認めない。 頬骨の骨幅は十分な幅を認める。 両側上顎洞とも軽度粘膜肥厚を認める。


手術計画と手術所見

手術計画:ステロイド常用されており、対診の結果、術中ステロイドカバー及び抗菌薬の点滴投与を行う方針となった。

2024年1月某日 静脈内鎮静法下に手術施行

術式:静脈内鎮静法下、上下顎All-on-4
(多数歯抜歯術、ザイゴマインプラント埋入術)施行

手術時間:2時間17分

術後は合併症等、特になし

術後顔貌所見

顔貌はほぼ左右対称、左右の口角の位置はほぼ等位。人中直下の位置から上顎正中はやや右側の位置に認めるが術前とほとんど同じ位置にある。リップサポートを認める。


術後口腔内所見

術直後の写真。上顎のプロビジョナルレストレーショの52┴25相当部の口蓋側に4つのアクセスホールを認め、All-on-4である事が確認出来る。上顎正中に対して下顎はやや左側に偏位。


術後パノラマ画像所見

2本のザイゴマインプラントと6本のノーマルインプラントに8本のアバットメントを認める。同部にはテンポラリーシリンダーが装着されている。上下とも骨整形を示唆する所見を認める。

試適

2024年6月

CAD/CAMで製作したプロトタイプを患者の口腔内にて試適、上顎の歯がやや唇側にある形態を希望された。

口腔外所見:口角の位置は左右差は殆ど等位となっている、バッカルコリドーは認めない。

口腔内所見:人中直下に上顎正中を認め、下顎とも正中が一致している。

最終補綴物セット

2024年7月

試適したプロトタイプをもとに、ジルコニアミリングマシンを使用して、モノリシックジルコニアの上部構造を作成しステイニングにて歯肉および歯牙の色を調整。術後6か月に患者様の口腔内にセット。色や歯の形態は患者様のご要望通りに作成した。


最終補綴物セット後のCT画像所見

全てのインプラントがインテグレーション様の所見を呈している。明らかな炎症所見は認めない。 また、最終補綴物とインプラント間に異常を示唆する所見は認めない。 両側上顎洞とも軽度粘膜肥厚を認める、術前より やや含気性が低下しているような所見を呈している。

最終補綴物セット後の顔貌所見

顔貌はほぼ左右対称、リップサポートを認め、上唇は自然な豊隆を認める。スマイルラインは下唇上部に沿うような湾曲を描いている。

上顎正中は顔貌の正中に一致している。


最終補綴物セット後の口腔内所見

最終補綴物セット後の写真。上下顎のモノリシックジルコニアの上部構造である事が確認出来る、またアクセスホールを計8つ認め、All-on-4である事が確認出来る。上顎と下顎は正中が一致している。


結果

現在、ロストも認めずご本人からの問題点を示唆するような訴えもなく経過良好である。 All-on-4をする事でノーマルインプラントでは予後不良となる危険性が高い症例でも、予後良好となる可能性がある事が示唆された。

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