他院で上下インプラント埋入手術を受けてロストし義歯になったが、当院で上下顎オールオン4ザイゴマインプラント4本の手術が可能だった症例

嶋田 比較
今回は当協会理事 大多和徳人先生が2024年に行った、上下顎オールオン4ザイゴマインプラント4本の手術症例です。下記、ご参照ください。
左:初診時
右:プロビジョナルセット時
 
患者情報
氏名:M.S様
53歳、女性

主訴:入れ歯からインプラントに戻して欲しい

現病歴:
過去かかっていた歯科医院で抜歯後にインプラントを数本埋入されたが、インプラントが数本抜けてしまい、当時の先生からは入れ歯以外は難しいと言われた。
その事がきっかけでパニック発作が頻回におきるようになりパニック障害を発症。悩んでいたところインターネットでザイゴマインプラント治療の存在を知り、ALLON4 ZYGOMA CLINICを受診。
既往歴:不安神経症、心身症、尿管結石、便秘症、高血 圧、便秘症

常用薬:グーフィス錠

生活歴:飲酒なし、喫煙あり

術前顔貌所見

嶋田 術前

笑顔の時、口角の高さが右側より左側…続きを読む

術前パノラマ画像所見

上顎は残存歯認めず、インプラント…続きを読む

術後パノラマ画像所見

上顎に4本ザイゴマインプラントと4…続きを読む

結果

嶋田 TF

All-on-4 治療を行う事で、上顎の歯が入り…続きを読む

嶋田 術前 顔貌

術前顔貌所見

笑顔の時、口角の高さが右側より左側がやや高く非左右対象であることが分かる。リップサポートがなく、人中が不明瞭。上唇の膨隆が弱く、ほうれい線も認める。

上顎義歯の正中は顔貌の正中に対して、右側へ偏位。また右側の咬合関係が反対咬合様の所見を呈する。若干バッカルコリドーを認める。


術前口腔内所見

写真は上顎に義歯をつけた状態で撮影。全部床義歯を装着している。下顎は正中の歯が残根化しており正中は不明瞭。上顎義歯、人工歯辺縁部は全体的に著明なプラークう付着を認める。舌は巨舌化しており、右の歯欠損部から一部露出。左臼歯部は反対咬合となっており、交叉咬合となっている。


術前パノラマ画像所見

7┼7にそれぞれインプラント所見を認める。 残存歯は21┬124、両側上顎骨は両側とも顎堤異常吸収していおり、上顎洞底部から顎堤頂部の骨幅は短い、下顎骨は全顎的に骨硬化したような所見を呈する。両側上顎洞部に上顎洞炎を示唆する明らかな所見は認めない。


術前CT画像所見

インプラント様所見を4本認める。両側上顎インプラントと両側上顎洞の交通を認めず、上顎洞炎を示唆する所見は認めない。両側上顎骨は骨が菲薄で、
特に両側臼歯相当部で著明な顎堤吸収を認める。 下顎骨は全顎的に顎骨の厚みを認め場所によっては骨硬化したような所見を認める。


治療計画

最初に4本のノーマルインプラントの撤去と抜歯をした上で、赤のラインにリダクションラインを設ける。上顎骨は前顎的に骨幅が短く、ノーマルインプラントの埋入が難しい為、ザイゴマインプラント4本を用いるAll-on-4治療 (EZ4) を計画した。下顎骨は十分な厚みがある為、出来るだけ左右対称な位置を埋入部位とするような設計とした。手術を円滑なものとする為、術中は静脈内鎮静法下での手術を予定した。


手術所見

4月某日 静脈内鎮静法下に手術施行

術式:静脈内鎮静法下、上下顎All-on-4
(ザイゴマインプラント4本埋入、下顎ノーマルインプラント4本埋入)施行

手術時間:2時間44分


術後口腔内所見

術直後の写真。上顎のプロビジョナルレストレーショの52┼25相当部の舌側に4つのアクセスホールを認め、All-on-4である事が確認出来る。上下正中は一致している。義歯装着時に見られたような交叉咬合は改善。


術後パノラマ画像所見

上顎に4本ザイゴマインプラントと4本のアバットメントにテンポラリーシリンダー、下顎に4本のノーマルインプラントと4本のアバットメントにテンポラリーシリンダーが装着されている。左右の上顎洞に明らかな曇りは認めない。


術後CT画像所見

両側頬骨にそれぞれ4本ずつインプラントが埋入されている。インプラント周囲に明らかな異常所見は認めない。両側上顎洞に炎症を示唆する所見は認めない。5┬5のインプラントと両側オトガイ孔は距離を認める。

術後顔貌所見

顔貌は左右非対称、口角がやや右側の方が高い。リップサポートは認め、上唇はやや豊隆したような所見を呈する。上顎正中は顔貌の正中に一致している。バッカルコリドーは認めない。


今後の治療の流れと結果

プロトタイプのDATAを基にジルコニア製の最終補綴物作成となった。
インプラント再治療の困難な症例でもAll-on-4ザイゴマインプラント治療( EZ4)を行う事が可能だった。また入れ歯からの離脱とともに若々しい顔貌の再現が試適の時点で可能であった。
この結果よりザイゴマインプラント治療がノーマルインプラントでは困難な症例に有用であり、正しいステップを踏む事で、若々しい顔貌の再現が可能であった。